木の名前の話vol.3『ナラ・カシ』その1
みなさん、こんにちは
木の名前の話第三弾はナラ・カシの話です。
このテーマは確実に話が長くなると思いますが、いくつかの記事に分けて、濃い内容をお届け出来るように頑張ります。
それではまず、ナラとカシはどんな木かと言うと、
どちらもブナ科コナラ属の樹木で、高木になる広葉樹です。
いずれも鋸歯があり、直線的でシンプルな葉脈が各鋸歯に向かって走っている という特徴を持っています。
そして、ナラとカシの違いは、落葉樹か常緑樹か で決まります。
ナラは落葉樹で、カシは常緑樹です。
おおよそ全ての落葉樹・常緑樹に言える事ですが、
落葉樹のナラは薄く柔らかな、葉の表面がマットでサラッとした感じです。
常緑樹のカシは厚く硬い、照りのあるツルッとした葉をしています。
↓ナラの葉
↓カシの葉
西日本では、カシは街中でもよく見かける木で、ナラは少し山に入らないと出会わない木という印象です。
木材としても、各樹種により特性は違いますが、おおよそ全てのナラ・カシ類は硬く重い材になります。
カシは漢字で「樫」、木へんに堅いと書きます。
例えば、代表的なカシであるアカガシは木刀の材料として有名ですし、その他のカシも強度の必要な農具や工具の柄になります。
ウバメガシは、備長炭の材料にもなったりします。
ナラも、フローリングや家具材等によく使われ、家具屋に行けば必ずナラ材の家具に出会えます。
樹木の勉強をしていると、ナラ・カシだけでなく、
シイ という木も併せて覚えなければなりません。
このシイはブナ科シイ属の常緑樹で、コナラ属ではないのですが、形態的にはかなりカシに近いです。
樹木の葉には、同種内でもサイズや形状に若干の違いがあり、葉の小さいシラカシとスダジイ等のシイ類は、パッと同定するのが難しい程よく似ています。
シイの中でも、マテバシイは食べられるドングリがなる事で有名です。
ちなみに、ドングリと言うのはブナ科の(主にコナラ属の)樹木の堅果の名称で、広義では、クリやクヌギを含むカシ、ナラ、カシワ、シイなどに成ります。
ナラ・カシ類は木材やドングリとして親しまれ、カシは身の回りでよく見かける事から、人に近い木と言えると思います。
そして、それは海外でも同じです。
ということで、木の名前の話vol.3『ナラ・カシ』その1はここまで!
次回から海外でのナラ・カシの話も織り交ぜて、話をしようと思います。
それでは。
福山市芦田川(府中市寄り)の散策
車でこの川の土手沿いを走った人ならすぐ分かる。
すっごいシンジュ(ニワウルシ)生えてる。
この度、休みの日を利用して、ほんの短い時間でしたが、福山市芦田川沿いの土手道の植生チェックしてみました。(府中市寄り)
まず目に飛び込んでくるのは、シンジュ(ニワウルシ)の木。
分かりやすい羽状複葉で、樹形もボサボサと大きな葉が付いていて遠目でも同定しやすいです。
木材としては、国内ではほぼ使われないですが、中国原産の樹木なので中国では小物等を作るのに使われるそうです。
こういう明るい場所で一気に成長する樹木は大体そうですが、木質は軽軟で加工はしやすいそうです。
神樹蚕(シンジュサン)という、この木の葉を食べるカイコもいるそうで、
その為、養蚕目的で日本やアメリカにもこの木が植えられました。
シンジュの名前の由来はドイツ語でゲッターバウム(神の木)、英語でツリー オブ ヘブン(天国の木)
で、訳されて神樹となりました。
中国では、臭椿という名前だそうで、神樹を使うのはおそらく日本だけのようです。
日本では、ニワウルシという名前の方が一般的ですが、実はウルシ科ではなくニガキ科で、触ってもかぶれる事はなく、その名の通り庭に園芸用として植樹されることもあります。
続きまして、
・シダレ?ヤナギ
ヤナギ科
湿地とか河川沿いによく育っています。
葉っぱが下の写真よりも細長い物が多いですが。
おそらくこの木もシダレヤナギでしょうか?
(詳しい方いましたらコメントください)
木材は柔らかく、日常的にはほぼ使われません。
・アキニレ
ニレ科
春に花が咲くハルニレに対し、秋に花が咲くアキニレ。
柔らかくギザギザした鋸歯が葉縁全体にびっしり。細かく小さな葉です。
樹皮もパリパリと剥がれて公園なんかでもよく見かけます。葉っぱも指で折るとパリッとした感触で折れるので、自分の中ではパリパリな木というイメージ。
ちなみに下の写真がハルニレ(芽吹き直後の写真で申し訳ない。)
アキニレとは外観が違い、どちらかというと同じくニレ科のケヤキの方が似ていると思う。
ハルニレの方が大きく育つのでニレ材といえばこっち。タモ材と見た目は似ているがタモより少し軽軟。
英語にすると、elm(エルム)で、映画エルム街の悪魔のエルムです。
海外では街路樹として人気が高いそう。
・エノキ
引き継ぎニレ科のエノキ。
木へんに夏 と書いて榎(エノキ)。
昔の人はこのの木陰で夏の暑さをしのいだそうです。
エノキと言えば、国蝶オオムラサキ。
オオムラサキの幼虫はこの木の葉を食べ育ちます。
そして、エノキってキノコじゃないの?という方もいらっしゃるかも知れないですが、
キノコの方はエノキ茸で、エノキの枯れ木などを原木として育つ木材腐朽菌です。
また、葉に虫瘤(虫えい)ができ、独特な形の玉を付けた葉をよく見かけます。
これは、寄生バエやダニによって変形して作られるもので、ハナイカダのような実や花ではありません。
このように、他の生物との関わりが深い樹木です。
木材としても稀に見ることがあります。
やや硬め・狂いが出やすいそうで、ケヤキの代用材として使われるそうです。
・マルバヤナギ(アカメヤナギ)
ヤナギ科の樹木。
実はこの度初めて見ました。
最初は托葉と蜜腺を見て、ボケかな?こんなところに?と思いましたが、調べてみるとどうやらアカメヤナギという樹木のようです。
ヤナギらしい葉脈の通りで、枝先の新芽は赤くなっています。
ヤナギらしく湿地や河川沿いによく育つみたいです。
・センダン
センダン科
ちょうど花が咲いていました。
写真が悪くて申し訳ないですが、紫のチラチラとした可愛い花です。
5月は、フジ・キリ・センダンなど 紫の花を咲かせる樹木が多いので、間違われる方もいますね。
街中でもバキっとした樹皮でどっしりと構えた大きなセンダンを見る事があります。
葉が独特で、二・三回羽状複葉の小さい小葉が沢山集まった大きな葉っぱです。(そのうち葉っぱの種類の記事書かないとなぁ)
家具やギターに使われるマホガニー材も、このセンダン科で、マホガニー材のギターを弾く自分にとってはテンション上がる樹木です。
・ヤマグワ
クワ科。ちょうど実がつき始めていました。
トゲトゲした緑の実がついています。
葉っぱは掌状脈なのですが、切れ込みがある葉・切れ込みが無い葉があり、差が大きい葉同士を並べると、本当に同じ木か?!と思うほどです。
この写真の木は、ほぼ切れ込み無しですね。
クワの葉は、カイコガの餌となる事も有名ですね。
シンジュもあるので、この川沿いで養蚕業が栄えそうです。
そして、木材としてもクワは有用です。
浅い艶のある茶色で、硬く強度もあります。
和家具や民芸品によく使われているイメージです。
アフリカのイロコ材なんかもクワ科ですね。
この度のお散歩、実はほんの15分程だったのですが、樹木紹介を一つ一つすると結構長い記事になってしまいました。
河川周辺の樹木を調べた経験があまりなかったので、普段見ない樹木も見れて満足です。
ニレ科やヤナギ科の樹木が多かったですね。
またいつか、川沿いの植生をチェックしてみましょう!
という事でここまで!
広島県福山市 『山野峡』に行ってきました。
みなさんこんにちは。
GW終わってしまいましたね。
楽しい休暇は過ごせましたでしょうか?
自分は、仕事の都合で10連休ではなかったですが、ほとんど家族や友人とワイワイして過ごしました。
そして、連休最終日。彼女の唐突な提案で、広島県福山市の山野峡に行く事になりました。
簡単に、感想とか植生レポートなどを語っていきます。
まず、アクセス。
福山市の神辺町北部から伸びる21号線を通って進んだのですが、
キャンプ場が近くなるにつれて、ほんと道が狭い!
自分は助手席でしたが、すれ違いが出来ないくらいの幅の道路で、横がすぐ崖。
交通量はほとんどなかったですが、ヒヤヒヤでした。
しかし、徐々にマイナスイオンーな雰囲気になってきて、
どこからともなく川の音。
いつのまに小田川という川沿いルートになっていて、森林に突入していました。
そして、山野峡キャンプ場に到着!
(キャンプする予定ではなかったですが)
と思うと、KEEP OUT(立ち入り禁止)の黄色いテープが、、、?!
行く前にリサーチしてなかったのですが、どうやらキャンプ場は閉鎖されていたそうです。
しかし、駐車場は使えそうだったので、車を停め近くを散策。
滝や、岩がゴロゴロの河辺。
人もほとんど居なくて、自然を満喫できました。
植生としては、道路沿いをサッと見ただけですが、
ミズナラ、アカガシ、アラカシ、ヤマグワ、ムラサキシキブ、シロダモ、イロハモミジ、ケヤキ、モミ、など
植栽ではないイロハモミジやケヤキが生えていたのは、なんとなく好感ポイントです。
そして、自分の好きな木の
アオダモ、チドリノキ、イタヤカエデ
も見られました!
好きな木と言うか、どれも自宅で育てている木です。笑
・チドリノキ
これでも、ムクロジ科カエデ属
全然カエデっぽくない葉っぱですが、カエデの仲間です。
テロテロの触り心地で、なんとなく作り物感があって、イヌシデみたいにトゲドゲした単葉の葉っぱです。(可愛い)
・イタヤカエデ
こいつもムクロジ科カエデ属。
今度は見るからにカエデ。単葉で掌状脈。
カエデ属の中で(たしか)唯一 鋸歯がない葉っぱです。
鋸歯:縁のギザギザ。チドリノキは鋸歯が深い。
イタヤの中にも、オニイタヤ、アカイタヤ、イトマキイタヤ、エンコウカエデ などありますが、多分この木はオニイタヤかと思われます。
ちなみに、我が家のエゾイタヤ
・アオダモ
以前、記事を書きましたが。
モクセイ科トネリコ属の樹木
羽状複葉が可愛いです。
詳細は、木の名前の話『タモ』を読んでください。
5月上旬は白くてふわふわの花が咲いていました。
最後に、家で育ててないですが、好きな木
・カゴノキ
クスノキ科の樹木で、樹皮が(春の)鹿の毛の模様のようにまだら模様です。
古い樹皮は黒く、その樹皮が剥がれると下から白い樹皮が現れる。というメカニズムでこんな模様になっています。
この木を見ると、樹木も人の皮膚と同じように代謝をして、生きているのだなと思います。
樹皮についても、カゴノキやマツみたいに部分部分でポロポロ代謝するもの、ムクノキやカエデみたいに、成長に合わせて縦に亀裂が入るもの等様々で、木の幹・樹皮を観察するのも中々奥深いです。
以上。山野峡の感想と、見つけた木を簡単に紹介してみました。
どこか自然の多い場所に行った際はこんな感じの記事をまた書いてみようと思います。
それでは。
木の名前の話vol.2『タモ』その2
みなさん、こんにちは
前回、木の名前の話vol.2としてタモについて書いたのですが、思ったより話が長くなったので2つに分けることにしました。
この記事が後半になります。
さて、前回はタモ、アッシュという名前が中心の記事でしたが、
モクセイ科トネリコ属 のトネリコって何だ?という話から書いていきます。
トネリコというのは、もちろん木の名前で
カタカナ表記で見ると海外の木っぽいのですが、れっきとした日本原産の樹木です。
名前の由来は、樹皮にカイガラムシの一種であるイボタロウムシが寄生していて、蝋成分を生成します。その蝋を襖や敷居の溝に塗り滑りを良くしていた事から、「戸塗り木」(トヌリギ)となり、転訛してトネリコになったそうです。
実は、この知識は記事を書く為に始めて調べたのですが、イボタロウムシと聞いてピンと来ました。
モクセイ科にはイボタノキという樹木がありまして、案の定イボタノキにもイボタロウムシが寄生するそうです。
もし、イボタノキより先にトネリコの蝋成分が利用されていたなら、
イボタロウムシはトネリコロウムシに、
もしくは、トネリコがイボタノキと呼ばれていたかもしれないですね。
このトネリコですが、他にも北欧神話?の世界樹の木のモデルになっていたり、何かと人々に愛されている木です。
タモの話その1で、トネリコについて触れなかった理由なのですが、
トネリコもタモもモクセイ科トネリコ属ですが、木材の流通量としてはタモが圧倒的に多いです。
そして、タモ材の中にはいくつも種類があるのですが、トネリコがタモ材として流通している という情報を見た事が自分はありません。
おそらく、同じような木材特性なので混同されて流通する事もあるとは思いますが、タモ材とは別の材という事で、記事は分けて書きました。
ちなみに、前回の記事に登場したアオダモですが、別名がコバノトネリコと言います。
小さい葉っぱのトネリコという意味ですね。
また、ヤチダモは逆にオオバトネリコと呼ばれる事もあり、
やはり、タモ≒トネリコ(≒アッシュ)に間違いありません。
ちなみに、アオダモの中にもヤマトアオダモ、マルバアオダモなどがありますが、樹種名としてはタモ基準で呼ばれる事が多いです。
また、トネリコも日本のトネリコ、ホワイトアッシュであるアメリカトネリコ、北欧神話のセイヨウトネリコとありますが、
中でも一番良く見かけるのはシマトネリコです。
シマトネリコは、住宅街を5分も散歩すれば必ず1本は見つかります。(広島県での体感)
シマトネリコは、別名タイワンシオジとも呼ばれ、沖縄、台湾、フィリピンなど東南アジア寄りな地域の樹木です。
日本でも西日本を中心に、洋風なお洒落なお家の庭には必ず植わっている。と言うくらいメジャーな木です。
たしかに、樹形も良く爽やかな印象で、洋風な雰囲気はありますが、実はアジアンな木なのです。
個人的には洋風な木と言えば、ギンヨウアカシア、ミモザなんかが好きですね。
自分は一人でマンション暮らしなので、小さめの苗を楽天で購入して愛でています。
ちなみに、木材としては、タモやアッシュとは異なり散孔材ですし、強度もありません。
タモは落葉樹、シマトネリコは常緑樹。気候も違いますし、同じトネリコ属でも木材特性は異なります。
葉っぱの形(羽状複葉)なんかはよく似ています。
↓タモ材
↓ホワイトアッシュ材
(当たっている光の違いで、色味がかなり違って見えます。すみません。)
まとめますと、
・トネリコは、戸塗り木から転訛した名前。
・幹にイボタロウムシが寄生している。(イボタノキも仲間)
・トネリコはタモ材と呼べるか微妙なところ
・タモも別名では○○トネリコと呼ばれるものもある。
ということでした。
タモ・トネリコに関することをおおよそ語りつくしたと思いますが、
また、思い出すことがあれば追記したいと思います。
身の回りにある樹木は多くのストーリーを持っていて面白いです。
北海道なんかに林業としてアオダモを植樹している地域があるそうなので、いずれ訪れてみたいですね。
それでは。
木の名前の話vol.2 『タモ』その1
木の名前の話、第2弾
今回は、タモ の話をします。
タモという木は、モクセイ科トネリコ属に分類される木で、比較的寒い地域に生育します。
本州の温暖な地域でも、ある程度標高の高い場所で見かける事があります。
↓広島県庄原市にて発見したアオダモ。広島市の三瀧寺辺りでも見ました。
北海道等寒い地域では、蓄積量も多いので材木としての利用もされています。
ただ流通してるのは中国やロシア産のタモが多いみたいです。
タモの中でも、アオダモは野球のバットに使われる事で有名な木で、王貞治・イチロー選手など多くの有名な選手に使われています。
ちなみに、アオダモって何が青いのか?と言いますと、
木の枝を水に浸けておくと、水が青い蛍光色になるそうです!
ネットで検索するとチラチラ記事が出てくるので検索してみてください。本当に綺麗な発色をしています。
さて、タモと言っても色々あるのですが、
次の4樹種の中で、一つ仲間外れの木があります。
どれでしょう?
・アオダモ
・シロダモ
・ヤチダモ
・シオジ
どう考えても、シオジが怪しい!!
のですが、残念ながらシオジはタモと同じくモクセイ科トネリコ属なのです。
正解はシロダモで、モクセイ科ではない仲間外れです。
シロダモはクスノキ科シロダモ属で、照葉樹林帯では一般的によく見られる樹木です。
木材としての特性も、樹木の特性も全く異なるのですが、
シロ→葉っぱの裏が白い事から
ダモ→タブが鈍ったもの
という理由でこの名前が付いたと言われています。(諸説あり)
タブ といえばタブノキの事で、シロダモ同様クスノキ科の仲間です。
クスノキ科の話はまた、別の記事にて紹介しましょう。
つまり、
タモという木は、特定の一樹種を指さず、アオダモ、ヤチダモ、シオジなどの事を指します。
(シオジはシオジと表記している事も多いです。)
ちなみに、ヤチダモのヤチは『谷内』と書き、谷の内側を流れる川の近く、水分の豊富な土地で育ちます。
これらタモ達は、世界的には『ジャパニーズアッシュ(Japanese ash)』という呼ばれ方をします。
つまり日本のアッシュ材という事ですが、
アッシュ材とは、北米のホワイトアッシュやスワンプアッシュなどに代表されるモクセイ科トネリコ属の樹木の木材名です。
これら北米のアッシュは樹木としては、アメリカトネリコと呼ばれます。
葉の形状や木材の特性も似ていて、本当に近縁種なのが分かります。
木材にした時、木目は似ていますが、アッシュの方が年輪の間隔が広く、色味もアッシュの方が白い印象なので、見る人が見れば見分けは付きます。
しかし、タモ同様にジャパニーズアッシュ材の中にも仲間外れの木が紛れ込んでいます。
それは、セン(栓)という木で、木材の特性がアッシュ・タモとよく似ています。
ギター業界では、このセンの木でボディを作りジャパニーズアッシュ材のギターとして販売していたことがありました。
センという木は、ウコギ科ハリギリ属の樹木で、モクセイ科ではありませんが、
木材特性が似ているから という理由だけでジャパニーズアッシュとされていました。
ちなみに、セン材の中でも、オニセン・ヌカセンという分類があり、硬く加工の難しい材がオニセン、それに比べ軽軟で加工の容易な材をヌカセンとよびます。
さらに、センは木材名で、センという樹木はありません。樹木として生きている時にはハリギリと呼ばれます。
樹木の見た目はトネリコ属とは全く異なり、
モミジの様な掌状脈の葉で、幹に無数の針を持つ樹木です。
新芽は山菜としても食べられます。
↓昔撮ったハリギリの葉
タモの話、大好きな木だけに話が中々止まらないですが、
とりあえず、ここまででこの記事は終わりにしようと思います。
最後にまとめると、
・タモは、モクセイ科トネリコ属でアオダモ・ヤチダモ・シオジなんかがある。
・シロダモはタモじゃない。
・タモ(樹木)=ジャパニーズアッシュ(木材)
・ジャパニーズアッシュとされるセンは、タモじゃない。
ここまで、モクセイ科トネリコ属と何度も書いて来ましたが、トネリコの説明もまだなので、またタモ・トネリコの話について追加の記事を書こうと思います。
自己紹介
みなさま、はじめまして!!
一件記事を投稿した後ですが、自己紹介をします。
この度、樹木と木材のうんちくや雑学などの面白い記事が書けたら良いなと思い、人生初のブログを始めてみることにしました。
初めての記事になるので、ここでは、簡単な自己紹介と、このブログで取り上げていく内容について話そうと思います。
まず、自分の事を少し話します。
自分が木にハマったのは、大学生の頃になります。
大学では生物学、生態学を専攻し、ニホンジカの樹木の嗜好性などの研究を行っていました。
ここで、生態学、樹木同定の基本を身に付け、樹種ごとの個性・それぞれの持つ雰囲気などの違いを覚えることが好きになりました。
そして、趣味のギターの影響で、木材の美しさに気づきました。
木目の種類、どんな樹種にどんな木目が出るか等。
これまた、樹種ごとの個性を調べる事・美しさが好きになりました。
この二つを大学4回生にして、同時にハマってしまい、そりゃあもう木のトリコになってしまったのです。
そして、「木のことをやりたい!」という、曖昧な希望だけを持ったまま、進路に迷いまして、
その際に、「『木のこと』といっても、生態学的な木?木材としての木?それとも、造園的な?建材としての?林業としての?楽器材としての?」
と、木には様々な面があることに気づきました。
その後、造園やビオトープ、里山再生の勉強をし、環境コンサルタントの会社にもインターンシップをしてみたり、材木屋でバイトをし、建材メーカー、家具メーカーで働き、ベランダの樹木も順調に増え、、
木を扱う色々な場所を見て回りました。
それぞれに魅力的でした。
木というものは、生きている樹木を状態では、美的対象になり、生態の中での生産者・住処などとして大きな役割を担い、
死して木材になっても、樹木とは違った美的対象になり、そして人間の住処である家になり、愛着を持って使う道具になり、さらには、バイオマス発電などにも使われます。
一面的に見ていては勿体ないほど、多くの面でそれぞれに大きな魅力を放ち、活躍をしているのです。
先に言ったように、木を扱う色んな場所を訪れ、材木屋でもアルバイトをさせてもらい、それぞれの業界の方とお会いしてみましたが、
それぞれの分野からの一面的な見方をする方が多く、多面的な見方をしている方はあまり見受けられなかったと思います。
木に触れ、木の事を学ぶ生活の中、
自分が木について学ぶだけでなく、
木にまつわる多面的な話を多くの人に発信してみようと思って、このブログを立ち上げました。
今後、不定期ではありますが、たくさんの木の話を発信していけたらと思います
各分野の専門家の方に比べれば知識は浅いので、未熟な点はありますが、正確な情報と面白い内容をお届けできればと思いますので、
よろしくお願い致します。
木の名前の話vol.1。『栗』
突然ですが みなさん、栗を英語でなんといいますか?
マロン!と思う方も居ると思いますが、マロンはフランス語で、栗を英語で言うとチェスナット(chestnut)です。
(ここまでの話は有名ですね。)
では、フランス語で栗はなんと言うでしょう?
「え?マロンじゃないの?」と思われそうですが、正解はシャテーニュ(chataigne)と言います。
この栗・マロンの名前問題、実はとても複雑です。
ここで言う栗とは、ブナ科クリ属のクリの事を指しています。
しかし、マロンというのはトチノキ科(分類方法によってはムクロジ科)のセイヨウトチノキ、別名をマロニエという木で、そのマロニエにできる実こそがマロンなのです。
何故マロンが栗だと思われているか、というのは、諸説あるようですが、栗の実とトチノキの実が似ている事が原因のようです。
↓がトチの実、栗にそっくりですね!
ちなみに、トチの実は渋みが強く、栗ほど食材には向きません。
さらに、トチノキは英語で何と言うか?と言いますと、
ホースチェスナット(馬栗)、バックアイ(鹿の目)などという呼び方があります。
、、、馬と鹿ですね。
さて、栗とトチノキの複雑な関係は、これだけに留まりません。
話は数年前に遡り、趣味でギターをやっている自分は、新たなアコースティックギターを買おうと楽器屋を訪れました。
そこで、とても音の良いアコースティックギターと出会い、スペックを確認してみました。
バック材(ギターの背中部分):チェスナット・ローズウッド
「ほう。栗とローズウッドの木材でできているのね?」
どれどれ、、、↓
(左右の濃い茶色がローズウッド、白いところがチェスナットと表記されていた。)
そして、これが我が家で愛用している栗の木(チェスナット)のテーブル↓
「あれ、、、全然違う?」
上のギターの方は、木目が目立たず(見事な縮杢は入っていますが)、導管の目立たない散孔材ですが、
下のテーブルは導管の木目がよく目立つ環孔材です。
これは、どういうことかと言いますと、
ギターに使われていると表記されたチェスナットとは、栗ではなく ホースチェスナット(トチ)のことなのです。
実際トチ材・ホースチェスナット材について調べてみると、縮杢の入った白くて美しい散孔材の写真がたくさん出てきます。
実は、このように名前の一部が削られ流通しているパターン、よくあります。
楽器業界に限らず木材業界全体で、非常に曖昧な木材名で木材が流通していて、ある程度知識がないと『本当は何の木なのか?』、というのは見分けにくくなっています。
というわけで、まとめると、
栗≠マロン で、
・栗(日)=チェスナット(英)=シャテーニュ(仏)
→ブナ科、環孔材の木材
・セイヨウトチノキ(日)=ホースチェスナットorバックアイ(英)=マロン(仏)
→トチノキ科orムクロジ科、散孔材の縮杢の良く出る木材
という事でした。
木の名前の話vol.1。
栗とトチの非常に複雑な関係、理解いただけたでしょうか?
最後に、おまけ雑学ですが、クリとそっくりな葉っぱを持つクヌギの木。
実は語源は、『クリニギ』(栗に似た木)→『クヌギ』となったそうです。
クヌギは、クリと同じブナ科ですので、トチと違い本当に親戚ですね。
長いお話でしたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
これからも面白い記事が投稿できるように頑張っていきます!