樹木材ブログ

樹木と木材 。元々は同じ物なのですが、樹木業界(生態環境・造園等)と木材業界(家具・建材等)が分かれたせいで、別々の物と捉えられています。樹木と木材は当然密接な繋がりがあるので、そのような木の面白い話ができればと思っています。

木の名前の話vol.1。『栗』

突然ですが みなさん、栗を英語でなんといいますか?

 

マロン!と思う方も居ると思いますが、マロンはフランス語で、栗を英語で言うとチェスナット(chestnut)です。

(ここまでの話は有名ですね。)

 

では、フランス語で栗はなんと言うでしょう?
「え?マロンじゃないの?」と思われそうですが、正解はシャテーニュ(chataigne)と言います。

この栗・マロンの名前問題、実はとても複雑です。

ここで言う栗とは、ブナ科クリ属のクリの事を指しています。
しかし、マロンというのはトチノキ科(分類方法によってはムクロジ科)のセイヨウトチノキ、別名をマロニエという木で、そのマロニエにできる実こそがマロンなのです。


何故マロンが栗だと思われているか、というのは、諸説あるようですが、栗の実とトチノキの実が似ている事が原因のようです。

↓がトチの実、栗にそっくりですね!
f:id:jumokuzai888:20190423121118j:image

ちなみに、トチの実は渋みが強く、栗ほど食材には向きません。

 


さらに、トチノキは英語で何と言うか?と言いますと、
ホースチェスナット(馬栗)、バックアイ(鹿の目)などという呼び方があります。
、、、馬と鹿ですね。

 

 

さて、栗とトチノキの複雑な関係は、これだけに留まりません。

話は数年前に遡り、趣味でギターをやっている自分は、新たなアコースティックギターを買おうと楽器屋を訪れました。
そこで、とても音の良いアコースティックギターと出会い、スペックを確認してみました。

バック材(ギターの背中部分):チェスナット・ローズウッド

「ほう。栗とローズウッドの木材でできているのね?」
どれどれ、、、↓

f:id:jumokuzai888:20190423184307j:image


(左右の濃い茶色がローズウッド、白いところがチェスナットと表記されていた。)

 

そして、これが我が家で愛用している栗の木(チェスナット)のテーブル↓

f:id:jumokuzai888:20190423184329j:image

 

「あれ、、、全然違う?」

上のギターの方は、木目が目立たず(見事な縮杢は入っていますが)、導管の目立たない散孔材ですが、
下のテーブルは導管の木目がよく目立つ環孔材です。

これは、どういうことかと言いますと、
ギターに使われていると表記されたチェスナットとは、栗ではなく ホースチェスナット(トチ)のことなのです。

実際トチ材・ホースチェスナット材について調べてみると、縮杢の入った白くて美しい散孔材の写真がたくさん出てきます。

 


実は、このように名前の一部が削られ流通しているパターン、よくあります。

楽器業界に限らず木材業界全体で、非常に曖昧な木材名で木材が流通していて、ある程度知識がないと『本当は何の木なのか?』、というのは見分けにくくなっています。


というわけで、まとめると、

栗≠マロン で、
・栗(日)=チェスナット(英)=シャテーニュ(仏)
→ブナ科、環孔材の木材
 
セイヨウトチノキ(日)=ホースチェスナットorバックアイ(英)=マロン(仏)
トチノキ科orムクロジ科、散孔材の縮杢の良く出る木材
 
という事でした。
 

木の名前の話vol.1。
栗とトチの非常に複雑な関係、理解いただけたでしょうか?

最後に、おまけ雑学ですが、クリとそっくりな葉っぱを持つクヌギの木。
実は語源は、『クリニギ』(栗に似た木)→『クヌギ』となったそうです。
クヌギは、クリと同じブナ科ですので、トチと違い本当に親戚ですね。
 
 
長いお話でしたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
これからも面白い記事が投稿できるように頑張っていきます!