木の名前の話vol.1。『栗』
突然ですが みなさん、栗を英語でなんといいますか?
マロン!と思う方も居ると思いますが、マロンはフランス語で、栗を英語で言うとチェスナット(chestnut)です。
(ここまでの話は有名ですね。)
では、フランス語で栗はなんと言うでしょう?
「え?マロンじゃないの?」と思われそうですが、正解はシャテーニュ(chataigne)と言います。
この栗・マロンの名前問題、実はとても複雑です。
ここで言う栗とは、ブナ科クリ属のクリの事を指しています。
しかし、マロンというのはトチノキ科(分類方法によってはムクロジ科)のセイヨウトチノキ、別名をマロニエという木で、そのマロニエにできる実こそがマロンなのです。
何故マロンが栗だと思われているか、というのは、諸説あるようですが、栗の実とトチノキの実が似ている事が原因のようです。
↓がトチの実、栗にそっくりですね!
ちなみに、トチの実は渋みが強く、栗ほど食材には向きません。
さらに、トチノキは英語で何と言うか?と言いますと、
ホースチェスナット(馬栗)、バックアイ(鹿の目)などという呼び方があります。
、、、馬と鹿ですね。
さて、栗とトチノキの複雑な関係は、これだけに留まりません。
話は数年前に遡り、趣味でギターをやっている自分は、新たなアコースティックギターを買おうと楽器屋を訪れました。
そこで、とても音の良いアコースティックギターと出会い、スペックを確認してみました。
バック材(ギターの背中部分):チェスナット・ローズウッド
「ほう。栗とローズウッドの木材でできているのね?」
どれどれ、、、↓
(左右の濃い茶色がローズウッド、白いところがチェスナットと表記されていた。)
そして、これが我が家で愛用している栗の木(チェスナット)のテーブル↓
「あれ、、、全然違う?」
上のギターの方は、木目が目立たず(見事な縮杢は入っていますが)、導管の目立たない散孔材ですが、
下のテーブルは導管の木目がよく目立つ環孔材です。
これは、どういうことかと言いますと、
ギターに使われていると表記されたチェスナットとは、栗ではなく ホースチェスナット(トチ)のことなのです。
実際トチ材・ホースチェスナット材について調べてみると、縮杢の入った白くて美しい散孔材の写真がたくさん出てきます。
実は、このように名前の一部が削られ流通しているパターン、よくあります。
楽器業界に限らず木材業界全体で、非常に曖昧な木材名で木材が流通していて、ある程度知識がないと『本当は何の木なのか?』、というのは見分けにくくなっています。
というわけで、まとめると、
栗≠マロン で、
・栗(日)=チェスナット(英)=シャテーニュ(仏)
→ブナ科、環孔材の木材
・セイヨウトチノキ(日)=ホースチェスナットorバックアイ(英)=マロン(仏)
→トチノキ科orムクロジ科、散孔材の縮杢の良く出る木材
という事でした。
木の名前の話vol.1。
栗とトチの非常に複雑な関係、理解いただけたでしょうか?
最後に、おまけ雑学ですが、クリとそっくりな葉っぱを持つクヌギの木。
実は語源は、『クリニギ』(栗に似た木)→『クヌギ』となったそうです。
クヌギは、クリと同じブナ科ですので、トチと違い本当に親戚ですね。
長いお話でしたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
これからも面白い記事が投稿できるように頑張っていきます!